共感する能力

先日、久しぶりに会った知人が興味深い話をしてくれた。
その人は、最近よく企業の人事担当者相手にセミナーを頼まれるのだという。テーマは採用面接の精度を上げる方法について。自己愛が強かったり、共感性の欠如している人物をきちんと不採用にできるためのコツを教えるらしい。
わたしはその話を聞いて、正直「おそろしい」と思ってしまった。わたしは自己愛が強く、共感性が低い人間だからだ。

心理臨床の仕事をしていたときの、否応なくそれに向き合わざるを得ない生活と、それが色濃く影響は及ぼしつつも、仕事への影響はだいぶ薄くなった今の生活との違い。わたしの迷いは、そんなあたりから糸を生やしている。仕事を自分の治療に流用していたことの持つ不健康さから脱したことを喜ぶべきなのか、向き合う機会を失うことで、一生固定してしまう可能性が高まったことを嘆くべきなのか。
おそらく正解はどちらでもなく、だからわたしはこれからも模索する。