Masterpiece

からくりサーカス」の一節で、娘が女優をやることに反対する父親が出てくる。自分の人生を使って、他人の人生を生きること。俳優とはそういうことをする職業だ。僕はたぶん、それは向いていない。「向いてない」なんて言葉は然るべき努力をした者でないと口にする資格がないんだろうけど、感覚的にはこの言葉がかなりしっくりくる。ただ、俳優という活動をする上での個別の様々なことは、それを職業にしなくてもとても重要で、わたしはそういうものを大切に生きていったらいいのではと思う。例えばそれは、他人の言葉を自分の言葉にして喋ること。

ゴールデンウィークは自由になる時間が多いので、ずっと頭の中にこびりついたものを取り扱うという、なかなかできないことに挑戦している。絶対に視界に入らないものを捕まえるような、すこぶる効率の悪い作業。見た目ウダウダやってるのと変わらないし、油断すると本当にただウダウダやってるだけになってしまう。瞬間瞬間で意味が抜けないように集中を働かすこと、過去からの流れを崩さないで積み重ねるようバランス感覚を働かすこと。ここに書くことは人から見ればよくわかんない、あるいは難しい、抽象的な、意味のないことかもしれないが、僕にとってはただ切実なこと。