(22)忘れゆくものを想う

4月に人事異動があり、担当業務が変わった。後任との引き継ぎについて、毎度いいものにしようと思えども、結局ばたばたなし崩しになってしまう。

新しい担当業務のことをどんどんインプットしていく中で、これまで当たり前だった知識が、急速に過去のものになっていき、思い出しづらくなっていく。

わたしは頭のデスクトップが狭いので、同じ密度で保持することは到底できないし、そうする必要もないと思うが、うまい具合に情報・経験を結晶化できて、必要に応じてトランザクショナル・メモリからデータを引き出せるようにできれば、それを後任に渡せばいいし、渡せなくても後任からの問い合わせに対応できるし、これからの私のキャリアにも活きると思う。つまり、いいことづくめなのだが、いかんせん時間とスキルが足りてない。

ひとつ考えられるアプローチは、人事異動がなくとも、定期的に情報・経験の結晶化の機会を設けること。そうすれば差分アップデートで対応できるし、最悪アップデート前のものをそのまま渡してもいい。時間的に余裕ができる時期、たとえば夏休みの時期などは好機なのでは。

もうひとつは、人の手を借りること。異動する本人の持っている情報を、誰かと話しながら整理していく。それは普段一緒に仕事をしている人(上司など)でもいいし、人事や社外の専門人材でもいい。人事異動は社内で一斉に起きるから、後者なら時期をずらす必要があるかもしれない。

そういう専門人材が仕事になるにはどうすればいいか。まずは今の共有されている知見を確認してみよう。きっと大したことないものが転がっている。それの問題を捉え、改善点と改善したものをまとめ、人に見せてみる。その前に自分や周りの人で試行してみる。改善に価値が認められたら、組織として共有してもらう。その際、自分にアクセスできるようにしておく。モノを介した一方的なコミュニケーションから、直接的なやりとりによる双方向的なコミュニケーションに移行できれば、あとはその実績を積み重ねていけば、いつのまにか専門家になっている。