(283)ひさしぶりの朝の時間

夜遅く家に帰り、ちょっとうとうとしてから風呂に入ったら、もう夜明け前だった。久々の朝の時間は、家を整えることに使う。乾燥機でしんなりしている服をたたんでたたんでしまう。洗濯かごに山盛りの服を洗濯機に放り込む。吊るして吊るして乾燥機。冷蔵庫で瀕死の食材を鍋につっこんでいく。こないだ買った小さい片手鍋に、賞味期限切れの牛乳を突っ込む。豆腐をサイの目にして放り込む。冷やご飯も放り込む。業務用スーパーで買った味の濃いコンソメを放り込む。固くなったウィンナーも刻んで放り込む。なんとなくシチューっぽくなったので、6Pチーズも放り込む。へらでかき混ぜると、鍋の底から焦げ付きそうな音がする。ジューッ。溢れそうなゴミ箱の中身をゴミ袋に移し替える。玄関先の小さな屑籠はマスクがはみ出ている。風呂場のカビキラーで活躍した短冊状のキッチンペーパーとラップのみなさんもまとめて突っ込む。線香も久しぶりに上げる。謎の料理は、思いのほかうまいうまい。コンソメパワーが強いので、塩は入れなくてよかった。あるいはコンソメを半分に割ってよかった。それが、俺の朝の話。

この春に遠くに行く同期に向けてささやかなメッセージをかく。これまでその人を想ってきた時間、その人と関わってきた時間がとてもよく表れる機会で、私はなんて薄っぺらいんだろうと思う。その薄っぺらさをそのまま文字にしてみたが、相手から見たら失礼に感じるかもしれない。昼は昨日とは別件でまた郵便局に行き、くだんの国家資格の申請書を簡易書留で送る。これで私もキャリ●ンと名乗れる(名称独占なので無資格者が名乗ってはいけないというトリビア)。昨日の続きじゃないけれど、当たり前のようなことを言ったつもりなのに、すごい抵抗されて、無駄に消耗する。何か隠れたルールがあるんだろうし、本当はそこに光を当てて歩み寄るのは上司の役目なんだろうが、そこまでやれない。きっとそれをすると、1日分の気力の8割くらいを消費してしまう気がする。今日のやりとりは不毛だったが、消耗は1~2割くらいで済んだんじゃないかな、といって自分を正当化してみる。

夜遅く家に帰ると、先日注文した本が届いていた。ちょっとだけ話したことのある職場の大先輩が少しかかわっていたらしい検定制度のテキスト。サラリーマンにありがちな自己啓発っぽいが、組織開発に向いている私のもやんとした好奇心に、グリッドを当ててくれるんじゃないかと期待する。だけど今は気力尽き果てているので読めない。でもちょっとだけ読んでみたいと思ってベッドまで持っていくが、案の定ページを開く前に私は沈没する。おわり