(211)混ざるとヒーロー

臨床心理学の大学院に通っていたとき、芝居に2本出演した。午前中にカウンセリングの実習で指導教員から指摘されたことと、夜に演出家から指摘されたことに共通するものを見出した瞬間、自己理解が一気に進んだ感覚を得たことを、10年以上前のことだけど鮮明に覚えている。心理学の教科書で言うと、「洞察」みたいな感覚があった。実際にその時わたしが理解した内容の価値はこの際おいておこう。重要なのは、①異なる文脈の経験同士が、②うまい具合に混ざることで、驚くような発見が生まれるということ。それは、ある人間が異なる分野に出ていったときにも起きるだろうし、異なる分野の人間同士がうまく出会ったときにも起きるだろう。そういうものが起きやすい場を自分に作ったり、現実に作ったりすることが、重要なインフラなんじゃないかと思いつく。

劇的に寒い日、ヒーローショーを観に行く。少し前にマンガワンというコミックアプリで、「トクサツガガガ」という作品が公開されていた。まだこの作品には課金していないのだけど、読むごとにどんどん引き込まれていて、電子書籍を購入するまであとわずかだ。特撮オタクというマニアックな分野のイントロが秀逸なのはもちろんのこと、それを多少強引な回も含めて、一般的な人付き合いや仕事、他分野のオタクのことと結びつけるパターンに、じわじわと琴線がこじ開けられつつある。だので、ショーを見ながら、トクサツガガガで得た豆知識がぶんぶんと頭をよぎっていた。エンディングで上の方で踊っていたのは、もしや普通のスタッフさんなんだろうか。そうじゃなかったらあざとすぎる(いい意味で)。