(270)10 years after

ちょっと前、子の幼稚園の近くのスーパーに、いい感じの洗濯用洗剤を買いに行って、在庫が切れていたマスクを買って、ほくほくとしていたら、タブレットにつけていたApple Pencilがいつのまにか消え失せていた。慌てて歩いてきた道を引き返して床を舐めるように探したけれど、結局見つからず。けっこうなお値段なので、しょんぼりした。

その日は、今の家に引っ越してきてからの懸念事項のひとつであった、風呂場のカビを初めてキラーした日だった。風呂場というのは家の中でもっとも重要な場所のひとつで、家の中ではベッドの次に私が長い時間を過ごす場所だ。私は風呂に入るのを日課にしていて、風呂に入るのを楽しみに生きていると言っても過言ではないくらいだ。引っ越してきてしばらくして、スポンジひとつで風呂場の掃除を試みたとき、タイルの溝の黒ずみが、いくらこすっても落ちなかった敗北感を覚えている。そして半年が経ってようやく、カビキラーを、はさみで細切れにしたキッチンペーパーにひたしては貼りつけ、ラップで壁に密着させるメソッドで雪辱を果たしている。一発できれいに落ちるとは限らないけど、基本的にはやればやるほど、風呂の壁はきれいになっていく。これもまた楽しからずや。今日(こんにち)までにすでに4回キラーを重ねている。今月中に最低でももう4回くらい、なんなら計10回くらいはやりたいものだ。そうやって、いつか人を家に招く日のことを考える。といっても、いきなり風呂場に招くことはないだろうが。想像上の人の目を設定すると、家をきれいにしたいと思うし、いろいろなことをしっかりやろうと思う。

日記とかブログってのは、そんなしょうもないことを書いても許されるのがいい。しょうもない回想をしながら、カレンダーの力を借りて、ふっと10年前のことを想う。そのとき、東京から250キロ北で大変なことが起きて、私はさらに700キロ北の地でうたたねをしていた。今はそこから地続きにあるけれど、いろんなものが違っている。2021年の私は、奇しくも同じ日に、ディスコード村とツイッター村の集会にお声かけいただき、未知なる出会いにワクワクしている。そして、子から託された手紙を、東に海を超えて、8000キロとか9000キロとか行った先に住んでいるというきょうだいに届けるべく、日本郵便のホームページを覗いている。